書評

【書評と要約】「学力」の経済学(中室牧子)林修も参考にする教育本

学力の経済学

教育経済学の専門家の中室さんが書かれた本です。

感覚ではなく、科学的な根拠をもとに教育に対してアプローチしています。

この本のことは知っていましたが、教育に関してデータをもとにした研究を知りたかったので、改めて読みました。

書評・感想

おすすめ度:★★★★★

非常に面白かったです。

教育では、みんなが当事者ということもあり、自分を中心とした非常に少ないサンプルで議論をする人が多いです。

その中で、データを用いて教育に科学的にアプローチをするというのは、自分の関心領域でもあり、勉強になりました。

この本があまりにも有名なため、一部すでに知っていたものもありましたが、幼児教育の費用対効果の高さや少人数学級の低さなどは想定外でした。

IQ、PISAのようなわかりやすいものだけでなく、非認知能力に関しても計測し、PDCAを回していきたいと思うところです。

「学力」の経済学を見る

もともとの本でも十分わかりやすいですが、普段読まない人はまんがで読めるものもあります。

両方読みましたが、一部の事例が省かれているので、可能なら通常版も読んでもらったほうが良いかと思います。

まんがでわかる「学力」の経済学を見る

要約・読書メモ

参考程度の読書メモです。

  • データを用いて教育を経済的に分析する
    • 教育は誰もが自分の意見を述べたがる
    • 子育てに成功したお母さんに再現性はあるか
  • 東大の親の平均年収は1,000万円
  • 因果関係と相関関係は違う
    • 学力が高いから読書をするのか
    • 読書をしたから学力が高いのか
  • 目の前ににんじん作戦はあり
    • 人間は将来的な利益よりも短期的な利益を優先する
      • 大人のダイエットや禁煙と一緒で、短期の誘惑に弱い
  • 褒美はテストでいい点か、本を読んだときか
    • 読書をする、宿題をやるかなどがインプット
    • テストの点や成績などがアウトプット
      • インプットに褒美を上げるほうがテストの結果がよかった
        • アウトプット組は勉強の方法がわからなかった
        • 指導者や先輩がいる場合にはアウトプットでも有効という研究があり
  • 一方で、お金などの外的インセンティブが、本人のやる気という内的インセンティブを奪うという懸念もある
    • 実際、献血や募金などで、対価が支払われることでやる気が失われたこともある
    • 勉強に関してそのような傾向は見られなかった
      • お金以外のものを与える、お金を利用して金融教育まで行うなどの対策が考えられる
  • ほめて育てるべきか?
    • 日本では自尊心が年齢が上がるにつれて下がっていく
    • 自尊心が高いほど学力なども高く、反社会的な行為も少なく、健康状態もいい
    • 自尊心が高い結果そうなるのではなく、学力がいい結果として自尊心が高くなる
  • 努力を褒めるか、能力を褒めるか
    • 努力を褒めるべき。能力を褒めるとかえって成果が下がる
  • テレビやゲームは悪影響か?
    • テレビやゲームによる影響はそこまで大きくない
    • テレビ、ゲームの時間が1時間短くなっても勉強時間は2分しか増えない
    • ただ、1日2時間を超えると影響は大きくなる
  • 子供の学習時間を増やすには?
    • 勉強を見る、時間を決めて守らせるのは有効
    • 同性同士の方が有効
    • 親以外でもOK
  • 友達の影響(ピアエフェクト
    • 周りの学力が高いと学力が上がる
    • 差がありすぎるとネガティブな影響があり
    • 問題児の悪影響は大きい
      • 引っ越しも有効
    • 習熟度別学級は有効だが、時期が早すぎるのはよくない
  • 教育への投資はいつすべきか?
    • 幼児教育がもっとも投資に対する収益が大きい
    • ペリー幼稚園プログラムで幼児教育と40年の追跡調査
      • IQや所得が高くなり、逮捕率が下がる
      • 社会収益率は7%~10%ともいわれている
  • 非認知能力
    • IQやテストの点を認知能力としたときにそれ以外のもの
    • 忍耐性や意欲などで将来年収や学歴などにも大きく影響するとわかった
    • 具体的には、自己認識、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知、社会的特性、回復力と対処能力、創造性、性格的な特性
    • 教育やトレーニングによって伸ばせる
      • 自制心:マシュマロ
      • やり抜く力:GRIT
      • しつけを受けた人は年収が高い
  • 少人数学級は費用対効果が低い
    • 日本の教育はデータがない
    • 少人数は効果があるが、費用に対して割に合わない
    • 教育の重要性を伝える
  • 日本の教育
    • 教育支出は550億から420億にまで減少
    • テスト結果に一喜一憂しない
      • 50%ほどが家庭や本人の要因という研究も
      • 中3の学力は35%が遺伝、34%が家庭環境、30%がその他とも
      • 生まれ月や体重も影響あり
      • 学校の資源にはあまり影響がないという研究も
    • ゆとり教育で格差が広がった
      • 親の学歴が高いほど学習時間が増えたり、高所得者層の塾関連支出が増えたりした
  • 子供の貧困問題
    • 子ども手当は学力向上には効かなかった
    • 少人数学級は貧困世帯に有効
    • 平等主義はデメリットが大きい
  • データで検証する
    • ゆとり教育や子ども手当などの教育政策は検証されていない
    • 日本はデータのデザインや研究者が利用できるデータが限られている
  • いい先生とは?
    • 授業評価は美人ほど高い
    • 担当した子供の学力の変化(=付加価値)で見る
      • 付加価値は学力だけでなく、大学進学率や将来年収も高めている
  • 教員の質を高めるには?
    • 学力の変化に対する成果主義はうまくいかないという研究も
    • ボーナスを失う場合には効果があるという例も
    • 教員研修は意味がない
    • 参入障壁としての教員免許をなくす選択肢もある
    • 教員免許の有無による差は小さいが、教員免許保持者同士の差はかなり大きい
      • 教員によって1年間で0.5と1.5という3倍の差がある
  • 教育にはエビデンスが必要
    • ランダム化比較試験が信頼できる
    • 教育政策をエビデンスベースで行う
    • ランダム化比較試験でも外部妥当性や一般均衡効果などの課題はある
      • 内部構造(なぜそうなっているのか)がわからない

 

興味がある方はこちらからどうぞ。

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